新しいコミュニティを創る取組み
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「ITと分業」で、未来の安心・安全な学校をつくる 学校法人角川ドワンゴ学園様

「ITと分業」で、未来の安心・安全な学校をつくる
学校法人角川ドワンゴ学園様

写真提供:鈴鹿福祉会様様
課題
  • ・コロナ禍の中でも停止できない学校運営
  • ・全国各所に複数の校舎を有するため、統一的な感染対策のマネジメントが不可欠
  • ・2万5千人の多様な生徒が安心して通学できる環境づくりが必要
解決策
  • ・「換気の基準と数値」の見える化で、全国の現場ごとの意識づけを行う
  • ・校舎内の換気状態を保護者や生徒にも公開
効果
  • ・数値に基づいて、各現場が生徒も巻き込んで自発的な感染対策を進める
  • ・透明度の高い感染対策PR訴求により、生徒も保護者も安心して通学

「学校法人角川ドワンゴ学園」さまは、「新しいネットの高校」として、開学以来、教育業界に新風を吹き込んできた。2023年6月時点で管下二つの高等学校を合わせて約2万5千人もの生徒が在籍している、文字通り「日本一のネットの高校」だ。現在では本校以外にも全国各地43箇所に通学コースのキャンパスがあり、学生たちは自宅や各地の通学施設を柔軟に活用しながら、個々の目指す進路や伸ばしたい能力に合わせて学習内容をデザインし、それぞれ学びを深めていく。
そんな「ネットの高校」を襲った、新型コロナのパンデミック。そうした危機に対して、学校はどのように立ち向かったのか――、そのキーワードは「ITと分業」であり、そこには「未来の学校づくり」につながる、新しい取り組みの姿があった。
今回は同学園の学校運営支援部部長・秋葉様と、同部保健支援課の奥間様にお話を伺った。

飽くなき「分業」を進める、「ネットの学校」

秋葉様、奥間様、本日はよろしくお願いいたします。まずは具体的な質問に入る前に、角川ドワンゴ学園さまについて少しご質問させていただきたいと思います。学校の簡単な概要についてお聞かせいただけますでしょうか。

秋葉様
よろしくお願いいたします。我々は通信制の学校として2016年に開校した通信制の高等学校で、インターネットを活かして生徒ごとの個別の要望にオーダーメイドでお応えできる点が強みです。当初は1,500人程度から出発しましたが、ありがたいことに現在では全校生徒で25,000人を超える大所帯となり、全国に43の通学可能なキャンパスを構えています。
左から秋葉様、奥間様。二人は「2万5千人の全校生徒をコロナ禍から守る」という危機を乗り越えてきた。「N高等学校」本校校舎では、エアロコのセンサーデータをモニターに投影し、外部公開している

左から秋葉様、奥間様。二人は「2万5千人の全校生徒をコロナ禍から守る」という危機を乗り越えてきた。「N高等学校」本校校舎では、エアロコのセンサーデータをモニターに投影し、外部公開している

続いて、お二人の現在のお仕事内容や現在ミッションなどについてお聞かせいただけますでしょうか。

秋葉様
私は学校運営支援部という部署で部長を務めております。当学園の特徴としては、とにかく分業をすごく押し進めておりまして。従来の学校ですと、基本的に先生が授業もやるし、テストもやるし、面談も部活もやる。でも、教員免許を持っていなくてもできる業務もたくさんあるわけです。そこで、我々のような教員免許を持っていない人間がチームを作ってサポートに入り、先生方の負荷を分散しながら、教育に専念できる環境をつくり、全体の生産性を上げていく―そんなチャレンジをしております。

その中で、我々は学校運営に関わるところの支援業務を担っております。具体的には、奥間が所属している保健支援課・文字通りの生徒指導支援課・そして学園全体のIT環境整備を所管する運営支援課、この3つの課がチーム一体となって、学校全体の分業を推し進めています。
奥間様
私の所属する保健支援課では、文字通り学校の保健衛生部門を支援しております。実は、私はもともとここ沖縄で養護教諭をしていたのですが、この領域においても、分業によって巻き取れる業務はたくさんあるのです。養護の先生って学校に1人しかいなくて、しかも何でも屋さんなので、本当に何でもやらなきゃいけないし、生徒と向き合う時間が圧倒的に足りない。私自身、小学校の現場で日々「どうにかならないか」と感じていたからこそ、分業は不可欠だと思っています。養護の先生の価値というのは、本来「何でも屋さん」ではなく、生徒とたくさん向き合って話しを聞く中で、「子どもが自分で問題解決ができるような力」を養っていくところにあると思うので。

「ネットでできた友達に、学校で会いたい!」

「分業」、早速興味深いキーワードが出てきました。この後コロナ対策のお話しも伺いたいのですが、貴学は2016年というコロナ禍の前からオンラインの部活や遠足を実施されるなど、まるで未来を先取りされてきたような印象があります。

秋葉様
一般的なこれまでの通信制の学校ですと、友達をつくる機会が少なかったり、独りで黙々と学習を進める時間が多い傾向にありました。でもネットを活用すれば、チャットで友達とつながったり、Zoomでグループワークをしたり、入学式や遠足などの行事や部活動もネットで実施することで友達づくりもできる。ネットを駆使することで、従来の通信制高校とは違った新しい未来の学校をつくることに取り組んでいます。また、開学初年度は通学コースは設けておらず、ネットコースのみでスタートしましたが、生徒から「友達に学校でも会いたいから通学コースをつくってほしい」という要望が飛び出してきたんです。そこで、2年目から新たに通学コースをつくり、生徒の希望に合わせてネットとリアルを組み合わせて学習できるようになりました。

少子化の現状にも負けず、貴学の全校生徒は2万5千人と大変な大所帯ですが、どんなお子さまが貴学に通われているのでしょうか。

秋葉様
開学当初は、不登校を経験された方や高校を退学された方が多かったのですが、今は一般的な全日制高校に通うような生徒も、当学園にメリットを感じて選んで入学してくれるケースが増えてきました。コロナ禍もきっかけに、通学せずにオンラインで学習することのニーズが増え、さらに多様な生徒が入学するようになってきていると感じます。

それでは、コロナの話も出てきたので、ここから学校の衛生管理のお話しに移らせて頂ければと思います。貴学は管理される校舎や生徒さんの数も多い中で、こうした保健業務をどのように行って来られたのでしょうか。

奥間様
生徒のコミュニティ形成は当初からインターネットを活用できていましたが、実は保健衛生管理業務というのは極めてアナログで、勘に頼ってきた側面が大きいです。基本的に各地のスクーリング会場には養護教諭が配置されているので、本部校舎にいる私が資料を作って指示を出していきました。でも実際、私が現場にいられるわけではないので、その施策がきちんと実行されているかは見えにくかったのが実情でした。
秋葉様
何より、校舎やキャンパスの教職員が、自分の校舎のことで手いっぱいになるんですよね。生徒数の増加に伴って、校舎もキャンパスもスタッフもどんどん増えていくわけですが、そうすると校舎ごとに認識の違いも出てくる。そこで特定の校舎だけを見るのではなくて、学園として、どこのキャンパスもしっかり漏れなく整っている状態を目指すために、ITも有効に活用しながら中央管理できる組織が必要だということで、保健支援課が立ち上がったという経緯です。

学校を守るために――コロナ禍で始まった戦い

そして2020年春から、日本列島も新型コロナのパンデミックに突入していくわけですが、貴学はあの未曽有の大混乱の中で、どのように学校運営を行われたのでしょうか。

秋葉様
当学園では、従前からチャットやweb会議のツールを使っておりましたので、生徒とのコミュニケーションという観点での問題はありませんでした。一方で、非常事態下でもリアルでやらざるを得ない業務や、生徒が学校に通ってくるスクーリングには課題がありました。
奥間様
スクーリングと学校運営を維持する事務担当者は、学校に郵送物も届きますし、どうしても出勤せざるを得ませんでした。ただ、その出勤時に感染が広がると、学校運営そのものが根幹から揺らいでしまう。そこでコロナ禍が本格化してきた2020年3月ごろには感染対策の備品をかき集めるなど、とにかく考える余裕もないなかで、周囲の医療関係者や養護教諭と情報交換をしながら、打てる手を打っていくという感じでした。

まさに非常事態。

奥間様
ですので、徐々に「クラスター対策には換気が有効だ」という説が有力になってくる一方で、我々の場合は校舎ごとに建築や空調設備の条件が全く異なっているため、「各校舎で同じ基準に基づいて換気ができない」という点に大きな課題がありました。そこで、最初に置時計型のCO2センサーが普及し始めた断面で、すぐに購入してみたわけです。

ところが、この置時計型は充電が手間であり、1台1台購入すると相当な費用がかかるうえに、消耗品ゆえの壊れやすさという課題もありました。
そしてそれ以上に、置時計型の場合は、センサーのあるところに行かないと数値が分からない以上、現場の先生に通常業務と合わせて確認をお願いするしかありません。生徒の対応で忙しい教職員に負担をかけるのも心苦しかったですし、こちらも現場の様子が分からなければ意味がないなと。さらにはご家庭でも換気については意識が高まってきて、「人が密集している」とか、「換気がされていない」というようなお声を保護者の方からもいただくようになった。そこで、まずはインターネット上でデータを取得し集中管理が可能なIoT型(ネットワーク型)のセンサーを全国で100台ほど試行的に導入してみました。

エアロコ導入の決め手は、全てをファーストビューで確認できるUI

そして実際、今年(2023年)3月にこのエアロコを導入いただいたわけですが、既設で導入いただいていたものも含め、市場には複数のIoT型CO2センサーもある中で、私どもをお選びいただいた決め手は何だったのでしょうか。

秋葉様
一番は「UI(見える化画面のインターフェース)の良さだと思います。全校舎のセンサーデータを一括で見える化できる「複数拠点モニタリング画面」やマップ上にセンサーデータを表示させる「フロアレイアウト画面」などによって、まさに集中管理が可能になりましたよね。全てがファーストビューで1枚の画面の中に収まって、いろいろと確認できるというところが魅力かと。
奥間様
一括管理画面に紐づく各キャンパスにはキャンパスごとの画面があり、視点をマクロからミクロまで切り替えながら全体を管理できる点が非常に良いです。さらに、サイネージやタブレットなどで測定値を保護者の方や生徒にもお見せできるのが安心感につながるという意味でも、やはりUIは重要ですよね。
左から服部様、原田様。柔和で明るい笑顔が印象的なお二人

「角川ドワンゴ学園」では、高等学校とN中等部(※)を合わせ、全国58拠点に約400台のCO2センサーが設置されている。画像の「複数拠点モニタリング画面」により、全校舎の全センサーデータを一括で確認することが可能(画像はイメージ)
※N中等部は学校教育法第一条に定められた中学校ではありません。ご自身の中学校に在籍したままN中等部で学んでいただきます。

秋葉様
加えて、多数あるキャンパスの状況を一元管理できるUIも魅力的ですが、これまで使用していた製品と比較して、費用対効果が高かった点も大きなポイントになりました。

当社のUIを評価いただきありがとうございます。現状、貴学ではエアロコをどのように運用されているのでしょうか?

奥間様
校舎やキャンパスに順次設置をしていく中で、「クラスター対策にはCO2濃度を1,000ppm以下に保つことが有効」という基準値があるわけですが、やっぱり基準値を超えると、現場の皆さんも「はっ」と構える。まずはそういう意識づけが前提だったので、まずは教職員の目につくところでエアロコの画面を見るようにしましょうと通達を出しました。
「見えない空気を数値で見える化して、適切な対応策をとっていく」ことで、生徒や保護者に安心していただくことを意識していました。

「数値が見える」ことで「改善につながる」と。

奥間様
そうです。各校舎から「どうセンサーを設置すればよいか」「どう換気すればよいか」など問い合わせも来ましたが、重要なのは本部から画一的な答えをお伝えすることではなく、それぞれの現場で最適解を見つけていくプロセスの方だったりします。
ですから、数値を一緒に見ながら、学生たちを巻き込んで一緒に試行錯誤してみてはどうかと提案もしました。実際、教職員よりも生徒のほうが調べものが得意だったり、深い知識を持っていたりする場面も多々ありましたから。そしてゆくゆくは、そうした環境や建築の部分で専門性を深めていく生徒が出てきても嬉しいなと。こうした形で、学園全体で「みんなでやっていこう」と、衛生意識がかなり前向きに変わってきましたね。
秋葉様
私のように学校全体を統括する立場からしても、今の奥間の話を聞いて、改めて業務効率のアップを実感したところです。当学園は全国にキャンパスがある中で、「見える化」によって、現場ごとに適切な対策が実行される習慣が根付きつつある。これは本当に喜ばしいことです。今後、さらにキャンパスも増やしていく予定ですので、このタイミングでのエアロコの導入は非常に良かったと感じております。

「見える化」が養う、学生の自発性

素晴らしいですね! ここまで学園内の反応を伺ってきましたが、保護者の方など学外の方からも反響はありましたか?

奥間様
2023年度に入ってから新型コロナが5類化したこともあり、教室の人数制限などの施策を緩和していくなかで、当初は生徒自身や保護者の方から一定、お問い合わせがありました。中には感染症への耐性が高くない生徒もいらっしゃいますので。それに対して、基本的な感染症対策はもちろん実施していますし、中でも換気については常にモニタリングしており、学内でもセンサーデータを計測して公開しているとお伝えをすると、「そこまで自信を持って対策をされているんですね!」という非常に良い反応をいただけたので、その点もエアロコを導入して良かったと感じる点です。
奥間様
例えば化学物質過敏症の生徒もいて、匂いや整髪料などそういったものに反応が起こるので、やっぱり換気が本当に重要で。だから彼らには風通しの良い場所や空気のこもらない場所を用意するわけですが、それでも空気や環境が不安だということであれば、「エアロコのデータを見てね」と。そうすると、実際に画面を見て、CO2濃度が高くなると自ら窓を開けて換気をするようになった生徒も出てきました。私も嬉しくて、その生徒に思わず「やれるじゃん!」なんて言って褒めてあげて。「自分で嫌なものを自分で回避できるようにする」というのは、社会に出ていくために必須の力ですから、そうした教育的意義のある事例が出てきたのも良かったですね。

「ITと分業」で、目指すのは「全部サポートできる学校」

その他、室内環境を見える化したことで生まれたメリットがあれば教えていただけますでしょうか。

奥間様
エアロコはCO2濃度と同時に温度・湿度といった室内環境のデータも取得していますので、その点でもいくつかメリットがありました。
一つ目は、「校舎やキャンパスごとの空調や断熱の性能に合わせて、より室内環境を整えながら換気ができるようになった」点です。例えば温度のデータを見ながら、夏場であれば、「気温が急激に上がる時間帯」を把握して、その前に一気に換気を行います。そうすればその後に部屋を閉め切ってもCO2濃度が上昇しにくく、かつ空調の利きも良くするということができるようになりました。
二つ目は、「データに基づいて効果的な設備投資の判断ができるようになった」という点ですね。例えば換気量が不足している校舎がある場合、これまでは「とりあえず新しい補助換気設備を入れてみる」ということしかできませんでしたが、エアロコの導入以降は「廊下の窓を開けたらどうなるか?」「教室のドアを数センチ開けるとどうなるか?」などデータに基づいた実験ができます。そうした各校舎の環境を把握したうえで、合理的かつ計画的な設備投資の判断ができるようになったというのは、コスト面でも非常にありがたいですね。
学園内の校舎やキャンパスには、画像のようにCO2センサーが設置されている

学園内の校舎やキャンパスには、画像のようにCO2センサーが設置されている

秋葉様
先ほども述べましたが、当学園はITと分業を駆使した未来の学校づくりを目指しています。だからこそエアロコという新しいITを使って業務効率を大幅にアップさせたというのは、学校の目指す方向性にも合致しており良いですね。

貴学が教育の未来をつくるべく取り組んで来られた中で、エアロコが微力でもお役立ちいただけたのは本当に嬉しい限りです。最後に一言、メッセージをお願いいたします。

秋葉様
当学園の生徒たちはやりたいことも多種多様です。ひとりひとりの生徒に対してサポートすることを目指し、いろいろな分野のエキスパートの教職員が在籍しています。
それと同時に生徒たちの「安心・安全」は徹底して守らなくてはならないと考えています。そうした中で、今回、エアロコの導入は生徒・保護者の安心感醸成や現場のスピード感向上に繋がったと思っています。今後もエアロコを継続してうまく活用していければと考えています。
奥間様
多分、これからまだまだやらなきゃいけないことも新しく出てくるでしょうし、時代もどんどん変わっていきます。そして時代が変わると、学校は絶対変わる。そこに合わせてどれくらい柔軟にやっていけるかが勝負かなと思っております。今後もさまざまな新しいツールを使いながら、やれることはいち早く、トライアンドエラーを重ねながらやっていきたいと思います!

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※ 土・日曜日、祝日、年末年始(12月29日~1月3日)は翌営業日以降に内容を確認させていただきます。

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